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HBOCについてのQ&A

【Q1∼Q5】HBOCについて

1. HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)とは何ですか?
遺伝性のがんの一つです。がん修復機能をもつ遺伝子BRCA1、BRCA2 のどちらか(または両方)に変異があるために、乳がんや卵巣がんを発症しやすい体質の方がHBOCと診断されます。(がんを発症していなくても、BRCA1BRCA2 の変異がある場合はHBOCと診断されます)
乳がんや卵巣がんの7~10%は特定の遺伝子が影響して発症していると考えられています。その中で最も多くの割合を占めるのが、BRCA1、BRCA2 という2つの遺伝子の変異によるものです。BRCA1、BRCA2 のどちらかに変異がある場合、80歳までに乳がんを発症する累積リスクは約70%、卵巣がんではBRCA1の変異がある場合44%、BRCA2の変異がある場合は17%※1となります。
2. どのような人がHBOCの可能性があると考えられますか?
ここでは、かんたんなチェック方法をご紹介します。
母方、父方それぞれの家系について、以下の質問にお答えください。あなた自身を含めたご家族の中に該当する方がいらっしゃる場合は、あなたは遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)である可能性が一般より高いと考えられます。
  • 40歳未満で乳がんを発症した方がいますか?
  • 年齢を問わず卵巣がん(卵管がん・腹膜がん含む)の方がいらっしゃいますか?
  • ご家族の中でお一人の方が時期を問わず原発乳がんを 2 個以上発症したことがありますか?
  • 男性の方で乳がんを発症された方がいらっしゃいますか?
  • ご家族の中でご本人を含め乳がんを発症された方が 3 名以上いらっしゃいますか?
  • トリプルネガティブの乳がんといわれた方がいらっしゃいますか?
  • ご家族の中に BRCA の遺伝子変異が確認された方がいらっしゃいますか?
気になる方はBRCA1,2遺伝子検査、遺伝カウンセリングをおこなっている専門の医療機関にご相談ください。
HBOCの可能性を知るチェックリスト」にも掲載しています。
3. 家族に乳がんや卵巣がんになった人がいなくても、HBOCである可能性はありますか?
可能性はあります。近親者に乳がん、卵巣がんの方が全くいない場合でも、Q2に当てはまる項目があれば、一度専門家への相談をお勧めします。
近年は核家族化が進んで親族の人数が少なく、たまたま女性の近親者が少ないために乳がん、卵巣がんにかかった方がいなかったということもあるかもしれません。
家族や親族がかかった病気の履歴を「家族歴」と言います。父母、兄弟姉妹を初め、父方、母方両方の祖父母やおじ、おば、いとこなどのご親族のがんの家族歴―――どのようながんにかかっているかを把握しておくことは、あなた自身のがんのリスクを判定するためにとても大切です。
また、家族歴は年々変化していくものであることにも留意してください。
4. HBOCは必ず遺伝するのですか?
両親のどちらかにBRCA1 あるいはBRCA2 遺伝子の病的変異がある場合、子どもが受け継ぐ確率は 1/2(50%)です。
HBOCと診断された方に2人の子どもがいる場合、2人のそれぞれが50%ずつの確率となり、2人のどちらかが必ず受け継ぐというわけではありません。また男女による差はなく、男性にも50%の確率で受け継がれます。
5. HBOCは男性にも関係ありますか?
BRCA1、BRCA2 の変異は男性にも50%の確率で引き継がれます。HBOCの男性は男性乳がんの他、前立腺がん、すい臓がんを発症しやすいと言われています。

【Q6∼Q11】検査について

6. HBOCの検査や治療はどこで受けられますか?
遺伝カウンセリングやBRCA1,2遺伝子検査が受けられ、HBOCの診療体制を整えている医療機関をこちらで紹介しています。
2018年5月より、再発・進行乳がんの治療中の方を対象に、分子標的薬「オラパリブ(商品名リムパーザ)」が使用できるかどうかを調べる目的で、保険診療の中でBRCA1,2遺伝子検査が行われるようになりました。この場合、本サイトに掲載されている検査施設一覧以外の医療機関でも受けることが可能です。主治医にご相談ください。
オラパリブの適応の判断以外で遺伝学的検査を行う場合には、保険外診療となります。
※保険診療でのBRCA1,2遺伝子検査の対象となるのは『化学療法歴のあるHER2陰性の手術不能又は再発乳がん』の患者さんに限られます。
7. HBOCかどうかを知るための遺伝子検査はどのように行なわれるのですか?
血液検査で調べることができます。
検査に先立って行われる「遺伝カウンセリング」では、遺伝についての正しい情報をお伝えし、血縁者の病歴などを詳しくお聞きして、遺伝性のがんである可能性を検討し、実際に遺伝子検査を受けるかどうかを話し合うことができます。
8. HBOCの遺伝子検査では何を調べるのですか?
BRCA1、BRCA2 という2つの遺伝子の中に他の人と異なっている場所がないかどうかを調べます。
遺伝子とは人体の設計図のようなもので、基本的には人類はほとんど共通していますが、遺伝子の中身に一人ひとりの違いがあって個性を生み出しています。BRCA1BRCA2 は誰もが持っている遺伝子ですが、その一部が他の人と異なる場合を「変異」といい、それにより正しい遺伝子の働きができなくなる場合を「病的変異」といいます。
BRCA1、BRCA2 いずれかの遺伝子に病的変異が見られると、HBOCと診断されます。
9. 郵送の遺伝子検査キットでHBOCかどうかわかりますか?
BRCA1,2遺伝子検査は厳密な精度管理が行われた医療機関のみで、一般的に血液検査で行います。
唾液など郵送の遺伝子検査も体質を調べる目的で行われています。しかしHBOCの判定とは目的が異なるものですので、検査会社の説明書や、検査キットに記載されている検査目的をていねいに読まれることをお勧めします。
10. BRCA1,2遺伝子検査はいつ受けるのがよいのでしょうか?
基本的には、いつでも受けられます。ただ、乳がんと診断された方は、手術前にBRCA1,2遺伝子検査を受けることで、手術方法を乳房温存療法から全摘出に変更するなど、より将来の再発リスクが少ない治療を選択できます。
※乳がんの再発や手術ができない場合、分子標的薬オラパリブ(商品名リムパーザ)の適応を調べるために保険診療でBRCA1,2遺伝子検査が行われる場合もあります。
11. 遺伝カウンセリングとは?
HBOCを初め、遺伝性のがんの診療で行われる遺伝カウンセリングは、遺伝に関する専門知識をもつ医師または「認定遺伝カウンセラー」が、家族歴などの状況から遺伝性のがんの可能性について検討します。HBOCが疑われる場合にはBRCA1,2遺伝子検査を受けるかどうか、血縁者にどのような影響があるかなど、一人ひとりの状況を考慮して話し合います。
また、遺伝的にリスクがあると判明した場合は、がんの予防法を一緒に考えます。
遺伝子検査の結果はご本人やご家族にとって少なからず影響を与えます。検査を受ける前に、遺伝子検査によりわかること・わからないことを知り、検査を受けることによりご自分や家族にどのような影響や利益・不利益があるか、検査の結果にどう対応するかについてもよく考える必要があります。遺伝カウンセリングは、患者さん自身が検査を受けるかどうかを決め、結果を理解し受け止めるためのお手伝いをするプロセスと言えます。
一方、遺伝子検査を受けないと決めた場合においても、ご本人やご家族の健康管理について話し合われます。
【参考】日本遺伝カウンセリング学会ホームページより
遺伝カウンセリングでは、遺伝に関わる悩みや不安、疑問などを持たれている方々に、まず科学的根拠に基づく正確な医学的情報を分かりやすくお伝えし、理解していただけるようにお手伝いいたします。その上で、十分にお話をうかがいながら、自らの力で医療技術や医学情報を利用して問題を解決して行けるよう、心理面や社会面も含めた支援を行います。
http://www.jsgc.jp/index.html

【Q12】治療について

12. 一般の乳がん・卵巣がんとHBOCの治療方法は違うのですか?
BRCA変異乳がんの場合、乳房温存術が可能な場合においても、温存した乳房におけるがん発症のリスクを最小限に抑えるために乳房切除(全摘術)が考慮される場合があります。手術ができない場合や再発した場合は、分子標的薬オラパリブ(商品名リムパーザ)が薬物治療の選択肢になることもあります。
BRCA変異卵巣がんについては、一般の卵巣がんとの治療法の大きな違いはありませんが、変異があるかどうかが考慮される場合もあります。

【Q13∼Q15】予防について

13. HBOCは予防できますか?
HBOC自体は遺伝による生まれつきの体質であり、体質そのものを変えることはできません。
現在のところ、HBOCと診断された方ががんの発症を防ぐ最も確実な方法は、発症する前に乳房や卵巣・卵管を切除する「リスク低減手術」(予防的切除手術)です。手術を望まない場合には、がんの早期発見のために25歳から半年~1年に1度の特別な乳がん検診を受けることが推奨されています。ただ、卵巣がんについては確実な検診方法がまだないため、「リスク低減卵巣卵管摘出術」が唯一の予防方法になります。
14. 乳房や卵巣のリスク低減手術とは何ですか?どこで受けられますか?
BRCA1、BRCA2 の病的変異のある方は、乳がん、卵巣がんの発症リスクが一般より高いため、がんを発症する前に、がんの発症リスクを最大限下げるため乳房や卵巣を切除する手術も実施されています。日本ではまだ多くの実績はありませんが、海外では広く実施されています。リスク低減手術に対応している医療機関については、一般社団法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構のウェブサイトをご覧ください。
15. 乳房・卵巣のリスク低減手術には健康保険が使えますか?
病気でない臓器に対する予防的な切除(リスク低減手術)は乳房・卵巣・卵管ともに保険外(自費)診療となり健康保険は使えません。具体的な費用については、実施している医療機関にお問い合わせください。