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HBOCと診断されたら

1.がんの治療

HBOCと診断された場合、将来の発症リスクをできるだけ減らす治療方法が提案されます。

①乳がんの手術の方法

  • 乳房温存術が可能な場合においても、乳房内再発の可能性を考慮して乳房切除を選択する方もいます。
  • それぞれの術式のメリットとデメリット、ご自身にとって大切にしたいことについて、医師や医療者と話し合いましょう。

乳房温存手術後の乳房内再発の可能性

乳房温存手術後の乳房内再発の可能性

BRCA遺伝子に病的バリアントをもつ患者さんと持たない患者さんにおける、乳房内再発率を比較した研究10報告をまとめて統計的に解析した結果を示す。BRCA遺伝子の病的バリアント(変化)の有無によって、有意差は認められなかった。しかし観察期間が7年以上(中央値)である5つの研究に絞って解析すると、BRCA遺伝子の病的バリアントを持つ場合では同じ乳房の再発率が高いとの結果だった。
※観察期間は、研究によって異なる(4年~14年)

(資料9より作成)

②進行・再発乳がんと卵巣がんの薬物療法

  • 分子標的薬の1つ、オラパリブ(商品名:リムパーザ)の適応を検討する際、BRCA遺伝学的検査が必要となる場合があります。
    • がん化学療法歴のある、手術できないあるいは再発のHER2陰性乳がんの方でオラパリブ(商品名:リムパーザ)での治療が検討されている場合
    • 進行卵巣がんの初回治療後の維持療法にオラパリブ(商品名:リムパーザ)での治療が検討されている場合
  • オラパリブの適応を判断するために行う遺伝学的検査は、保険診療の中で行われます。この検査を行う対象となるかどうかは、主治医にお尋ねください。

③その他のがんの薬物療法

  • オラパリブは、プラチナ製剤の化学療法で効果が見られた後、再発の卵巣がんに対する治療薬としても認められています。この場合、BRCA遺伝学的検査は必要ありません。
  • 上記は、2020年5月現在の状況であり、オラパリブの適応は今後、他の条件や他の臓器のがんなど、対象が広がる可能性があります。

2.検診と予防

  • HBOCと診断された場合、がん発症リスクの高い乳房、卵巣、前立腺に対して継続的な検診を行うことが推奨されています。乳がんを発症する前に乳房に対する「リスク低減手術」を行うことも選択肢の一つです。卵巣に対しては、有効な検診がまだないため、リスク低減手術が推奨されています。
  • 2020年4月より、乳がんあるいは卵巣がんを発症していてBRCA遺伝学的検査が陽性となった方に対するリスク低減手術や乳房MRI検査による定期検診が保険適用になりました。乳がんや卵巣がんの罹患歴のない方などのリスク低減手術や検診は保険適用になりません(2020年5月現在)。
  • 世界の主要ながんセンターの同盟団体であるNCCN(National Comprehensive Cancer Network)によるがん診療ガイドラインでは、HBOCと診断された場合の特別な検診や予防方法の目安を下記のように示しています。

①女性の場合

乳房に対する検診・予防
18歳〜
  • 乳房の自己検診を行う
25~29歳
  • 医療機関で半年~1年に1回の頻度で視触診を受ける
  • 1年に1回乳房造影MRI検査(MRIができない場合はトモシンセシスの併用を考慮したマンモグラフィ)を行う(血縁者に30歳未満で乳がんと診断された方がいる場合は、個別に判断する)
30~75歳
  • 医療機関で半年~1年に1回の頻度で視触診を受ける
  • 1年に1回、乳房造影MRI検査とトモシンセシスの併用を考慮したマンモグラフィを行う
75歳以上
  • 個別に話し合う
  • 乳がんの治療をされた方は、両方の乳房を切除した場合を除き、上記のように1年に1回、乳房造影MRI検査とトモシンセシスの併用を考慮したマンモグラフィを継続する
  • 「リスク低減手術」(乳がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に乳房を切除する手術)の選択について、医療者と話し合う

(資料6)

卵巣に対する検診・予防
  • リスク低減手術(卵巣がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に両方の卵巣および卵管を切除する手術)が、出産を終えた後、典型的には35~40歳で受けることが推奨される。BRCA2遺伝子の病的バリアントを有する場合は、卵巣がんの発症年齢が8~10年遅いため、40~45歳まで延期してもよい。
  • 手術を選択しない場合は、婦人科の医師に相談し、半年に1回、経腟超音波検査、腫瘍マーカー(血液検査)を30~35歳から考慮してもよい。

*リスク低減手術によってのみ、卵巣がんのリスクや卵巣がんによる死亡率を減らすことが報告されています。経膣超音波検査や腫瘍マーカーの検査は、積極的に推奨されるほどの精度は示されていません。

(資料6)

②男性の場合

乳房と前立腺に対する検診
35歳〜
  • 乳房の自己検診を行う
  • 医療機関で1年に1回、乳房の視触診を受ける
40歳〜
  • BRCA2遺伝子に病的バリアントを有する場合には、前立腺がんの検診を受けることが推奨される。
  • BRCA1遺伝子に病的バリアントを有する場合には、前立腺がんの検診を受けることを考慮する。

(資料6)

<留意事項>

上記の検査内容やリスク低減手術は、すべての医療機関で行われているわけではありません。お住まいの地域でこれらの医療を受けられる医療機関については、医療者にご確認ください。
それぞれの検査や手術のメリットやデメリット、効果や限界について医療者から説明を受けて、計画を立てましょう。